第2章

サカリの笑い

シンが十二の夏のことである。

川原で、年下の子が泥を投げられていた。
数人が囲んで笑っていた。
本気で傷つけようとしているわけではない。ただ、やめなかった。

サカリが前に出た。

笑いながら輪の中に入り、泥を投げていた子の肩を叩いた。
何かを囁き、また笑った。
気がつけば、皆が笑って散っていた。
泥を投げられた子も、つられて笑っていた。

シンは動けなかった。

夕方、二人になったときシンは言った。
「お前は何もしなかった。」

サカリは眉を上げた。
「止めただろ。」

「あの子は謝られていない。誰も謝っていない。」
「でも誰も泣いていないだろ。丸く収まった。」
「丸く収まったのではない。ごまかされたのだ。」

サカリは少し笑った。
「お前は難しいことを言うなぁ」

その笑いが、シンの内側に火をつけた。

翌日、村の集まりで、シンは言った。
「昨日サカリがしたことはごまかしだ。あの子への仕打ちは何も正されていない。」

広場が静かになった。

サカリの顔が、かすかに歪んだ。

村の大人が言った。
「サカリが収めてくれたではないか。」

シンは続けた。
「正しくない。収まったように見えているだけだ。」

誰も頷かなかった。
村人たちはサカリを見た。
サカリは何も言わなかった。
ただ、うつむいた。

家に帰る道、シンは一人だった。
正しいことを言った。
しかしサカリをうつむかせた。
誰もシンの言葉を聞かなかった。

何が間違っていたのか、シンにはからなかった。