第5章
サカリの道
サカリはその頃、村で頭角を現し始めていた。
言葉が巧みで、村の長老たちにも気に入られ、
争いごとがあれば間に入って収め、
誰かが困れば真っ先に声をかけた。
村人たちはサカリを褒めた。
サカリは褒められるたびに、少し背が伸びた。
シンはサカリの変化に気づいていた。
しかし何も言わなかった。
ある日、シンとサカリは川沿いを歩いた。
サカリは言った。
「俺はこの村を変えたい。もっと豊かにしたい。」
シンは聞いた。
「誰のために?」
サカリは少し間を置いてから言った。
「村のため、皆のためだ。」
シンはそれ以上聞かなかった。
しかし心の中で思った。
本当にそうか?それとも、認められるためなのか。
その翌日、シンはサカリの真似をした。
村の集まりで、大きな声で語った。
道について、正しさについて、村の在り方について。
言葉は正しかった。
しかし誰も聞いていなかった。
年長者が言った。
「若造が何を言っている。」
シンは怒りが込み上げた。
正しいことを言っているのに、なぜ聞かないのか。
その夜、マツのもとへ行った。
マツは庭の草を抜いていた。
シンが話し終えると、マツは手を止めずに聞いた。
「お前の手は今日、何をした。」
シンは言えなかった。
手は何もしていなかった。口だけが動いていた。
マツは言った。
「手が語るまで、口を閉じよ。」
二人の間に、薄い霧のようなものが漂い始めたのは、その頃からだった。