第11章
サカリの変化
その頃からサカリは、ニゴリと話すようになっていた。
シンは気づいていたが、何も言わなかった。
ある夜、サカリがシンのもとに来た。
久しぶりに二人で飲んだ。
サカリは言った。
「シン、お前は正しいことを言う。しかし正しいだけでは、人はついてこない。」
シンは言った。
「ついてきてほしいわけではない。」
サカリは言った。
「お前はそれでいいかもしれない。しかし何かを変えたいなら、人を動かさなければならない。人を動かすには、感情に火をつけなければならない。」
シンは言った。
「感情に火をつけることと、道を示すことは、違う。火をつけるだけの者は、その火がどこを焼くか、制御できない。」
サカリは少し笑った。
「理想論だ。」
シンは黙っていられなかった。
酒を置いて言った。
「お前はニゴリに使われている。目を覚ませ。」
サカリの顔が変わった。
「使われている? 俺は自分で考えて動いている。」
シンは立ち上がった。
「自分で考えているなら、なぜニゴリの言葉をそのまま繰り返す。
感情に火をつけろ、人を動かせ。それはニゴリの手口だ。」
サカリも立ち上がった。
「お前はいつもそうだ。正しいことを言えば、人が従うと思っている。」
シンは言い返した。声が大きくなっていた。
二人の間にあった酒が倒れた。
サカリは背を向けた。
「もういい。お前とは話にならない。」
シンは追いかけようとしたが、やめた。
自分の手が震えていることに気づいた。
怒りのまま正しいことを言えば、正しさが伝わるはずだった。
しかし伝わったのは怒りだけだった。
サカリとの溝は、その夜から埋められなくなった。
しかしシンは感じた。
サカリは、何かを決め始めている。