第22章

老いた武士

海沿いの町に、一人の老いた武士がいた。

武士はかつて名の知れた者だったが、今は小さな道場で子供たちに剣を教えていた。
弟子は少なく、金もなかった。
しかし武士の目は、静かに光っていた。

シンは武士に聞いた。
「なぜそんなに穏やかな顔をしているのか。」

武士は言った。
「昔は違った。若い頃は勝つことしか考えていなかった。
しかしある時、気づいた。
勝ち続けることは、終わりのない戦いを生むだけだと。
勝つために生きている者は、死ぬまで戦い続けなければならない。」

シンは聞いた。
「では何のために剣を持つのか。」

武士は言った。
「守るためだ。しかし守るための剣は、抜かずに済むことが最善だ。
抜かずに済む力を持つことが、本当の強さだ。
抜かなければならないとき、迷わず抜ける。
しかし抜いた後は、必ず重さを感じる。
その重さを感じなくなった者は、道を外れている。」

シンはその夜、武士の道場に泊めてもらった。

翌朝、武士はシンに言った。
「お前はいつか、大きな試練に会う。
そのとき、刃を持つ者の顔をするな。
道を守る者の顔をしろ。
その違いが、周りの者に伝わる。」

シンはその言葉を、腹の底に深く置いた。