第23章

アラの過去

旅の途中、アラが珍しく酒を飲んだ。

焚き火の前で、アラはぽつりと言った。

「俺が故郷を出たのは、人を傷つけたからだ。」

シンもキヨも、黙って聞いた。

「力任せに生きていた。怒りで動いていた。
ある日、言い争いになって、相手を叩いた。
相手は倒れて、起き上がれなかった。
死にはしなかった。しかし、それ以来歩けなくなった。」

アラは火を見ていた。

「俺は謝れなかった。怖くて逃げた。それがずっと、ここにある。」

胸のあたりを押さえた。

シンは言った。
「まだ謝れると思うか。」

アラは言った。
「相手が受け取ってくれるかどうかからない。」

シンは言った。
「受け取ってもらうためではない。汝のためでもない。
けじめとは、相手のためでも自分のためでもなく、道のためにつけるものだ。
清めなければ、お前はずっとその重さを抱えたまま歩く。
清めれば、重さは変わる。消えはしない。しかし歩ける重さになる。」

アラは長く黙っていた。

やがて言った。
「帰り道に、寄る。」

キヨが静かに言った。
「一人で行かなくていい。」

アラは何も言わなかった。
しかし目が、少し変わった。