第28章

ニゴリとの対峙

三日後、ニゴリがシンのもとに来た。

男は以前より太り、着物が良くなっていた。
しかし目の鋭さは変わらなかった。

ニゴリは言った。
「シンとやら、話を聞いた。旅から戻ったばかりだそうだな。
お前のことはサカリから聞いている。正直な男だと。」

シンは黙って聞いた。

ニゴリは続けた。
「この村には今、強いまとまりが必要だ。
お前のような正直な男が、我々と共に動いてくれれば、村人たちも安心する。
どうだ、一緒にやらないか。」

シンは言った。
「何のためのまとまりか。」

ニゴリは言った。
「村を守るためだ。外からの脅威に備えるためだ。」

シンは言った。
「外からの脅威とは、具体的に何か。」

ニゴリは言った。
「隣村が、この村の田畑を狙っている。」

シンは言った。
「それは確かめたのか?」

ニゴリは少し顔を歪めた。
「皆が知っていることだ。」

シンは言った。
「皆が言っていることと、事実は別だと、以前もここで言った。覚えているか。」

ニゴリの目が変わった。
笑顔の仮面が、少し剥がれた。

「お前は村の和を乱したいのか。」

シンは乱れなかった。

「和とは、黙らせることではない。
本当の和は、皆が正直に話せる場所にある。
恐れで黙らせた村は、和ではない。張り子の和だ。
嵐が来れば、一瞬で崩れる。」

ニゴリは立ち上がった。

「お前は敵だ。」

シンは言った。
「お前の敵ではない。ただ、道を守っているだけだ。」

ニゴリは去った。

アラが奥から出てきた。
「聞いていた。手を出しそうになった。」

シンは言った。
「それでいい。しかし今は手を出す時ではない。」

アラは言った。
「いつが時だ。」

シンは言った。
「道が決める。今はまだ、言葉の時だ。」

その夜、シンは川に出た。
同じ川だった。
昔、石を投げた川だった。

怒りはあった。
以前と同じ、本物の怒りだった。

しかしシンは石を拾わなかった。
川岸に座り、水の音を聞いた。
怒りは消えなかった。消す必要もなかった。

怒りは流れの一部だった。
それに逆らわず、しかし流されもせず、ただそこに在った。

キヨが静かに隣に来た。

「お前は以前と違う。削られていない。」

シンは言った。
「怒りはある。しかし怒りに削られなくなった。」

キヨは何も言わず、しばらく一緒に川を見ていた。