第9章

神の在処

ある夕暮れ、シンはマツに問うた。

「神とは何か。」

マツはしばらく空を見た。
それから言った。
「お前はこれまで、神に会ったことがあるか。」

シンは答えた。
「ない。」

マツは言った。
「あるはずだ。」

シンは黙った。

マツは続けた。
「山を見て、息が止まったことはあるか。水が流れる音に、ふと足を止めたことは。朝の光が地面に落ちるのを見て、何かを感じたことは。」

シンは思い出した。
何度かある。

「それが神か。」

マツは言った。
「神は命じない。神は問いかける。山が問いかけ、川が問いかけ、お前の胸の奥が問いかける。その問いに向き合うとき、神はすでにそこにいる。」

シンは聞いた。
「神を信じなければならないか。」

マツは首を横に振った。
「信じるものではない。感じるものだ。感じたことを、正直に生きることが、神への答えになる。」

その言葉は、シンの内側で長く響いた。