第32章

カゲという男

ニゴリが去って半月が経った頃、村に一人の男が来た。

カゲという男だった。

ニゴリとは全く違った。
声は静かで、愛想が良く、よく笑った。
困っている者には声をかけ、初対面の者にも馴染んだ。
村人たちは最初、好意的に受け入れた。

シンはカゲを見て、何かが引っかかった。
しかし何かが、とは言えなかった。

アラが言った。
「感じのいい男じゃないか。」

シンは言った。
「そうだな。」

しかし目を離さなかった。