第36章
ガルという男
カゲが大人しくなって間もない頃、村にまた新たな者が現れた。
遠い異国から来た男だった。
肌の色が違い、言葉が全く通じなかった。
身振り手振りで、村に留まりたいと示した。
村人たちは戸惑った。
シンは言った。
「まず受け入れよう。異国の者にも神は宿る。」
男の名は、本人が発音する音をそのまま呼んでガルとした。
ガルは力が強く、よく働いた。
最初の数日は、重い荷を運び、田畑の仕事を手伝った。
村人たちは少しずつ、ガルに慣れていった。
ガルは食事の作法も、田畑の入り方も、村の者とは違っていた。
他の者の畑に断りなく入り、実をもいだ。
悪気はないようだった。ガルの故郷では、それが普通なのかもしれなかった。
シンは帰路の山村のことを思い出した。
あの時、自分の作法を押し付けて、村の老人を怒らせた。
良かれと思った善意が、敬意の欠如だった。
今度は違う伝え方をしなければならなかった。
シンはガルの前に座り、自分の畑に案内した。
入る前に足を止め、畑に向かって小さく頭を下げてみせた。
それからガルを見た。
ガルは不思議そうな顔をしたが、同じようにやってみた。
シンは頷いた。
言葉が通じなくても、見せることはできる。
押し付けるのではなく、この場所のやり方を、まず見せる。
それが敬意だった。
しかし一週間が経つ頃から、少しずつ問題が起きた。